【ホラー小説書評】ZOO1/乙一
あらすじ
何なんだこれは!天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され…(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(「SEVEN ROOMS」)など、本書「1」には映画化された5編をセレクト。文庫版特別付録として、漫画家・古屋兎丸氏との対談も収録。
書評
乙一による色々なジャンルのショートストーリーを集めた短編集。ZOOは2巻もあるけど、話は全く繋がっていないので別々で記事を書きます。
個人的に乙一の中には「黒乙一」と「白乙一」があると思っていて、前者はえげつないほど残酷でカオスな話を書く乙一、後者は感動的な美しい話を書く乙一。このZOO1は黒と白が混ざり合った1冊です。
乙一は文章が難しくなく複雑なトリックなども少ないので、ホラー小説のみならず小説初心者にも読みやすくてちょうどいいと思います。
①カザリとヨーコ:黒
双子なのに姉だけ母親から虐待を受けている話。主人公はその姉。虐待を受けているのにもかかわらずどこか明るい主人公と、最後の最悪のオチとのギャップがなんとも言えない不気味さを醸し出している。
②SEVEN ROOMS:黒!真っ黒!
一番おすすめです。
ある時気づいたら排水溝しかないコンクリートの部屋に閉じ込められた姉弟が主人公。弟が排水溝から出入りした結果、ここには7つの部屋がありそれぞれに人が閉じ込められていること、そして順番に人が殺されていることを知る。
シチュエーションとしてはSAWに似てます。グロい表現やスリリングなシーンもあり、SAW好きにはたまらないんじゃないでしょうか。
ラストは壮絶です。こういう終わり方好きだなあ。
③SO・far ーそ・ふぁー :白
両親の仲が悪い子供の話。父親は「母親が死んだから二人で生きていこう」と言い母親がいないように振る舞う、母親は「父親が死んだから二人で生きていこう」と言い父親がいないように振る舞う、という不思議な話。
ラストはなるほどと唸る感じかな。
④陽だまりの詩:白
死期の近い「あなた」を埋葬する為に作られたロボットの話。「死ぬ」とはどういうことか、「心」とは何かを少しずつ理解していく。
ラストは心が暖かくなります。(SEVEN ROOMSと同じ作者とはおもえない…)
⑤ZOO:黒
恋人を殺した犯人を探す…という振りをしながら自分が殺したことを自覚している…という不思議な話。
こんな人におすすめ
- ホラー小説初心者(ただしSEVEN ROOMSは避けたほうがいいかも…)
- 不思議な世界観が好きな人