【ホラー小説書評】復讐執行人/大石圭
あらすじ
香月健太は33歳。3つ下の妻と5歳と6歳の娘たちと4人で横浜市郊外の住宅地に暮らし、大手家電メーカーの横浜営業所にサービスエンジニアとして勤務している。平凡でありきたりの毎日だったが、香月健太は心の底から幸せだった。あの男が現れるまでは……。明日から家族旅行へ行くという夜、事件は起きた──。
書評
主人公は大石圭作品でよくあるタイプで、孤独・根暗・純粋な男。その男が、平凡だが幸せな家族の家に忍び込み、子供を殺し妻を凌辱し夫に重傷を負わせる。
動機は「裏切られたことによる復讐」。
この「裏切り」が終盤まで明らかにならない中、家族を殺された夫(香月健太)が犯人に「復讐」を誓う。つまり復讐が復讐を呼ぶ、という話です。
各章の冒頭には、世界で起こった復讐にまつわるエピソードが記述されています。中には理解しがたい理由の復讐エピソードも含まれてます。「復讐の不毛さ」は知識として持っているが、それでも復讐せずにはいられない人間の愚かさをメッセージとして伝えている作品です。
加害者側と被害者側の双方の視点で描かれた「復讐」。オチにちょっと拍子抜けする人もいるかもしれませんが、大石作品らしくていいんじゃないでしょうか。
こんな人におすすめ
- 理不尽なストーリーが好きな人
- 復讐劇が好きな人