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【ホラー小説書評】夏の花火と私の死体/乙一

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

あらすじ

 九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなくー。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追求から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。

書評

乙一のデビュー作です。ストーリーとしては、9歳の少女が些細な理由で友達に殺され、犯人の女の子とその兄が必死でその死体を隠す、という話です。それだけです。

この小説が独特なのは「死体の一人称による表現」があること。『二人はわたしを押し入れに隠した』とか『わたしは宙を舞い、どすんと音をたてて落ちる』のように、わたし=死体の目線でストーリーが進んでいくのである。デビュー作にしてはぶっ飛んだ表現技法だと思います。(ちなみに乙一が16歳の時に書いたそうです。凄え(゚Д゚))

 

若干「不思議ワールド」ではあるので、妙に大人びた兄の言動や、何度もバレそうでバレないご都合主義的なストーリーに違和感を感じるかもしれませんが、まあ「細かいことは気にするな」という感覚で読んでもらいたいです。「世にも奇妙な物語」を見る感覚ですかね。

 

 

あと文庫にはもう一つ「優子」というショートストーリーがあります。こちらはうってかわって大人の正統派ホラー。とある村の物書きの家に住み込みで働くお手伝いさんの話。家の主人の奥さんの「優子」は病弱で部屋から一歩も出られないのだが、主人公は部屋に入ることを許されておらず一度も姿を見たことが無い。次第に「本当に優子は存在するのか…?」という疑念を抱きはじめ、部屋に入ってしまうと…

終始不気味な雰囲気を漂わせ、最後のオチも驚きに満ちているので、短いですが読み応えのあるストーリーです。

 

こんな人におすすめ

  • 乙一好きな人
  • 斬新な表現が好きな人
  • ハラハラする展開が好きな人