こわいものみたさ|おすすめホラー小説の書評

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【ホラー小説書評】砂の女/安部公房

砂の女 (新潮文庫)

あらすじ

 砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。

書評

 ホラー小説かどうか微妙なところですが、非常に面白かったのでご紹介します。

 

作者は安部公房。「ノーベル文学賞に最も近かった男」とよく言われるほど、戦後の純文学界において重要な一人でした。

 

自分はこの作品が初めての安部作品だったんですが、話はシンプルなのに巧みな情景描写や心理描写によってぐいぐい入り込んでいきました。

 

とある教師が昆虫採集のために砂に埋もれる部落を訪れるが、部落の人々に案内された蟻地獄のような砂の穴の中にある家に泊まることになる。そこには女が一人で住んでいた。朝起きると外に出るための梯子が無い。そこで主人公は、この蟻地獄に閉じ込められたことに気づく。この部落では、家が砂に潰されないようにするために「ひたすら砂を外に出す」作業をする労働力が必要で、その「犠牲者」を探していた…

こんな理不尽なシチュエーションがあるでしょうか…(゚Д゚;)

 

何とかそこから脱出しようとする主人公の焦りと怒り、あとそこに住む女との心理描写が、全て「砂」に関連付けて表現されています。

情景描写が非常にうまいので、まとわりつく砂の不快感などが読んでいるこちらにも伝わってきました。

 

主人公は脱出できるのか?女とどういう関係になるのか?

 

先がどうなるのかわからないので、一気に読めてしまう良い作品です。

 

こんな人におすすめ

  • 理不尽なシチュエーションが好きな人
  • ハラハラする展開が好きな人
  • 砂が好きな人